日本経済を学ぶ 7日目 欧州債務危機(ユーロ危機)


ギリシャの破綻

世界がリーマン・ショックからの回復を目指す中、ヨーロッパのギリシャが破綻してしまいました。これはギリシャ政府の財政赤字が大きく、国が借金を返済できなくなってしまったのです。

その発端は、ギリシャが政権交代し、旧政権の粉飾決算を新政権が暴露したことに始まります。旧政権は国の借金を意図的に少なく発表していました。つまり隠蔽していたのです。これを受けて格付け会社がギリシャ国債の格付けを引き下げ、ギリシャ国債が暴落しました。格付け会社とは国や企業の信用度を評価する会社です。

ギリシャの借金が膨れ上がった原因としては、

  • 社会保障費に莫大な費用が掛かっていたこと
  • 人口における公務員比率が異常に高く、労働人口の約4分の1が公務員であったこと
  • 脱税や汚職が蔓延していたこと

が指摘されています。

そしてギリシャの通貨が『ユーロ』であることがキーポイントです。

ヨーロッパはそれぞれ別々の国ですが、『EU(欧州連合=European Union)』に加盟している国では共通の通貨である『ユーロ』を採用しています。もしギリシャが自国通貨であったならば、日本やアメリカの様に金融緩和を行い投資を促したり、あるいは自国通貨安に誘導し輸出を拡大させることが出来たでしょう。最終手段としては、インフレ覚悟でお札を増刷して借金返済にあてるといったことが出来たかも知れません。

しかし、その他EU諸国と同じ通貨であるため、これらを勝手に行うことは出来ません。ただ、それでも財政は各国別々なのであくまでギリシャは自力で財政赤字を縮小させなければなりません。ギリシャは増税や歳出削減などの緊縮政策を行いましたが、厳しすぎる増税に国民が反対し、徹底した緊縮政策を断行できなかったため、結果ギリシャは破綻しました。なのでEU諸国はギリシャ支援のため厳しい財政再建計画を義務付けた上で多額の援助を行います。

スペインへ飛び火

ギリシャの破綻を受けて、金融市場では「次はスペインが破綻するかもしれない」という危機感が高まり、スペイン国債が値下がりしました。

ギリシャと同様に財政赤字が大きかったスペインは、同じく増税や歳出削減といった政策を執り、財政再建を進めていました。また、スペイン国債を大量に保有していたのはスペインの銀行であり、国債が値下がりしたことで巨額の損失を被った結果、自己資本が減少し貸し渋りを招いたことでスペイン経済は大きく悪化しました。

本来であれば、貸し渋りが起きたら政府は銀行に出資し、貸し渋りを止める行動を取りたいのですが、そもそも財政赤字が原因で国債が値下がりをし招いた結果なので、ここで政府が出資するとより一層国債が値下がるリスクがあり、そのため政府による公的資金の注入は行われませんでした。その後スペインは、ドイツとECB(欧州中央銀行)に支援を求め、一応の落ち着きを撮りも出しています。しかし、依然高い失業率が問題として残っています。

日本への影響

欧州の債務危機は直接的には日本に大きな影響はありませんでしたが、間接的には大きな影響がありました。ギリシャやスペインの国債が値下がりしたことで、国債を保有していた欧州の銀行は大きな被害を被り、その結果、欧州全体の景気が悪化しました。

すると、欧州が最大の輸出先である中国経済も悪化します。そうなると、中国が最大の輸出先である日本経済も悪化しました。

単に需要の減少だけで輸出が減ったのではなく、欧州の債務危機を発端にユーロ制度が崩壊するかもしれないという危機感から、為替市場ではユーロが売られ円が買われたため、急激な円高ユーロ安になったことも一因です。これにより、欧州製品との価格での競争力が失われ輸出が大きく減少したのです。

ヒーロードイツの活躍

欧州債務危機を乗り切った最大の功労者はドイツです。
EUはその特性上、景気が良い国もあれば、ギリシャやスペインの様にやばい国もあります。そしてそのユーロ圏の中で優等生なのがドイツです。

ドイツはこれら債務危機問題にあたり巨額の支援を行っています。実際これら支援の際、ドイツ国内では「ドイツがそこまでする必要がない!」といった反対の意見も多数出ました。しかし、ドイツがギリシャやスペインを救った背景にはまさに、『EU(欧州連合)』の根本的な理念『欧州統一国家』があるからでしょう。

これは人類誕生以来ずっと戦争が絶えなかった欧州で、戦争のない平和な世界を目指し、話し合いという最も平和的な手段でなされた超国家とも言える『EU(欧州連合)』を”守る”という強い信念をもっているからだと思います。

これは欧州全体が強く願っていることだと思いますが、特にドイツに関しては第一次、第二次大戦とを枢軸国として戦った背景があるため、より強く思っているように感じます。実際にはもっと複雑な思惑などもあるかもしれませんが、平和への思いが根底にあるのでしょう。

おしまい。


日本経済を学ぶ
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