日本経済を学ぶ 5日目 長期低迷時代を振り返る


バブルが残した爪あと

バブルは深い爪あとを残して崩壊しました。

まず消費の減退です。
バブル期に家や高級車などを買っていたので、新たに買う必要がありません。さらに不景気になったので倹約するようになります。企業の方も物が売れないため新たに設備投資をする必要もなく、むしろ過剰設備として負担になっていました。さらに借金返済や膨れ上がった人件費が経営を圧迫します。

より深刻な痛手を受けたのが銀行です。
銀行は融資をたくさん行っていたので、バブル崩壊によるこれら融資先の倒産などで貸し出した資金を回収できなかったからです。これが不良債権となり銀行の自己資本を減少させました。自己資本が減少すると銀行は『自己資本比率』という規制により貸出が制限されます。これが『貸し渋り』を招きます。

銀行はこの規制により、”自己資本の何倍までなら貸せる”かが決められており、たとえ健全な借り入れの申請でも断らなければいけなかったのです。これにより企業はお金を借りることが出来ず倒産が相次ぎます。また政府は景気回復に向けて公共事業を増やしましたが、景気低迷を脱することは出来ず、むしろ巨額の財政赤字を残してしまいました。

金融危機

1997年にアジア通貨危機の影響でバブル崩壊からの回復途上である日本は深刻な金融危機を経験します。アジア全体の景気悪化により日本経済も悪化し、銀行は新たな不良債権を抱え自己資本をさらに減少させました。

これにより貸し渋りが増えさらなる不良債権を生み出す悪循環に陥ります。ついには大手銀行が破綻したことで、預金者が一斉に預金を引き出す『取り付け騒ぎ』が発生するリスクが高まりました。これを懸念した日銀は各銀行に資金を供給し、貸し渋りを緩和させました。

また政府は依然深刻な銀行の自己資本不足を解消するため公的資金の注入を計画します。しかしこれはなかなか国民の理解を得られず、そうしている間にも金融危機は深刻化し、やっと国民が危機を感じその必要性を理解したことで公的資金は注入されました。こうして金融危機は収束に向かいました。しかし、依然不良債権や財政赤字などの問題は残りました。

小泉構造改革の中身

バブル崩壊後、約10年。日本経済は未だ回復せず低迷していました。
そこで登場したのが小泉元総理です。

この頃の知識人は、「10年経っても景気がよくならないのは、日本に何か根本的な問題があるのでは?」と考える人が増えました。これを解決すべく『構造改革』を掲げた小泉総理が誕生します。いわいる『小泉構造改革』の中身は『不良債権処理』『財政再建』『規制改革』『民営化』『グローバル・スタンダード』の5つです。

不良債権処理とは、
文字通り銀行に不良債権を処理させるという政策です。当時の銀行には不良債権として抱えている土地などの地価が回復するのを待っていた所がありましたが、これを諦めさせ不良債権として処理させるというものです。

財政再建とは、
景気対策をせず、歳出を削減することで財政赤字を減らそうというものです。つまり、全く公共事業などの財政政策や金融政策をしないという事です。これには「より景気を悪化させる」という懸念がありましたが、幸い輸出が伸びたことで景気は緩やかに回復しました。

規制改革とは、
規制を緩和して自由な経済活動を行えるようにする改革です。『市場原理』というのは”人々の自由に任せると経済は上手くいく”という経済学の基本的な考えです。

民営化とは、
国営企業の中で民間で運営できるものは民営化しようというものです。代表的なものでは『郵政民営化』がこれに当てはまります。またこの民間でできる事は民間に任ている状態を『小さな政府』と言います。

グローバル・スタンダードとは、
現行の日本の仕組みや制度を世界的に通用、普及、定着しているものに変えようというもので、小泉構造改革の核とも言える取り組みです。当時のアメリカ経済が好調だったので、「日本もアメリカの仕組みや制度を取り入れたら景気が良くなるのでは?」という考えから生まれました。また世界中の国や企業ではすでにアメリカ式の仕組みや制度などを採用していたので、グローバル・スタンダードと呼ばれていました。

これらの構造改革はあくまで長期的な視野で日本経済を良くしようというものなので、直接的な景気回復の要因ではありません。当時はアメリカ経済が好調で輸出が増えたことが景気回復の主因であります。

どうすれば景気は回復するのか?

小泉構造改革の是非は分かれています。
景気回復に必要なのは『需要不足改善』『供給側の効率化』のどちらかの立場で議論が交わされるからです。

小泉構造改革は『供給側の効率化』の立場で景気回復を図りました。しかし、小泉政権以後の緩やかな景気回復は輸出が拡大したことが要因なので、この『需要不足改善』か『供給側の効率化』かという議論に決着は付きませんでした。

ただ、2013年を振り返り、僕自身感じたことが1つあります。
それは『人々の意識、マインド』です。

実際、安倍政権になってからの急速な株高や円安などはアベノミクスと、人々の期待が具現化したものだと思っています。つまり、「なんか良くなるかも♪」というプラスの意識が芽生え、それが実際に経済を少し良くしたのだと思います。苦難を乗り越え、己の力で立ち上がってきた日本人であれば、デフレ脱却を果たし、見事復活を成し遂げるだろうと僕は信じています。

おしまい。


日本経済を学ぶ
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