日本的経営の特徴とは
そもそも、会社とは誰のものか?
この問に関して法律上では株主が会社のオーナということになります。
なので会社の使命は『株主の利益のために仕事をする』ということになります。
しかし、実際に日本では『従業員主権』といい、『会社は従業員のための存在』としています。『社員は家族』という言葉を聞いたことがあるかと思います。この考えに基づき、多くの日本企業は以下の3つの特徴を持っています。
- 終身雇用制度とは
- 年功序列賃金制度とは
- 企業別労働組合とは
終身雇用制度とは、原則として就職してから定年退職するまで勤める、というものです。これにより企業は社員育成のメリットを最大限に活かせるため積極的に社員を育成出来ます。また、同時に社員の忠誠心を高めることにつながるのでより一層活躍を期待出来ます。これは特に日本っぽいですね。
年功序列賃金制度とは、勤続年数によって給料が上昇し出世もする、というものです。これによって、同期はみんな同じ給料をもらっているのだから助け合っていこうね、という協力体制を作れます。これに関しては『事なかれ主義』という、これまた日本的な考えをよく表しているように感じます。他人をうらやむ事で要らぬ争うを起こさないように、皆同じにすることでこれを回避する。といった感じでしょうか。この反対が『実力主義』というもので、個人の能力によって給料も出世も差個人差が大きく出ます。
企業別労働組合とは、同業種であっても各企業にそれぞれ労働組合があることです。欧米では産業別労働組合のほうが一般的です。例えば日本では、自動車会社にそれぞれ組合があります。それに対して欧米では、会社の垣根を越えて1つの産業である自動車産業としての労働組合があります。
日本的経営の特徴と言われるものです。
この日本的経営はバブル期まで上手く回っていましたが、バブル崩壊後の長引く不景気により、この日本的経営を見直すべきでは?、という意見が多くなりました。
特にその時期好調だったアメリカに習い、『グローバルスタンダード』と呼ばれるこのアメリカ的経営を取り入れる企業が増えます。これまでの年功序列賃金制度をやめ『実力主義』へと移行したり、不景気なので正規雇用者を減らし、代わりに非正規雇用者に切り替えてコスト削減を計ったりしましたが、リーマンショック以後、特に『実力主義』の流れは減り、年功序列賃金制度に戻った企業も多くあります。さらに、日本的経営の考えである『雇用を守る』という方針でありながら好業績をあげている企業が多くあることから、今後も日本的経営は続いていくと思われます。
継続的取引とは
企業同士の取引などを見ても日本的な特徴があります。完成品メーカーと中小の下請け会社や、それら企業と銀行の関係です。
日本では取引先が決まるとそのほとんどが継続取引となります。アメリカでは毎回一番イイ取引相手を選別しています。継続的な取引によるメリットは、まさにこの取引相手を毎回選別するという行程を飛ばせるという所です。
例えるなら、私達が髪の毛を切る際、行きつけの床屋さんや美容院であれば「前と同じで♪」という魔法の言葉が使えるということです。顔なじみになることで、少し融通が利いたり便利な面がありますよね。このように日本企業は、メーカー、下請け、銀行共に継続的な取引を行い、お互いに協力関係を築きます。
生き残りをかけた経営判断と淘汰される下請け
しかし、近年めまぐるしく変化する世界経済によって、この関係性を維持出来なくなり、倒産する下請け企業が増加しました。特に人件費が安い中国や東南アジアへの工場移転に伴い、これまでの取引の契約を打ち切るという事態が多くあります。
それまで完成品メーカーは下請け会社に安定的な注文を出していました。下請け会社もこれに依存し、1つのメーカーを主な取引相手としていたので、突然の打ち切りを契機に操業停止に追い込まれたり、しまいには倒産する企業が増えてしまったのです。
中国企業の圧倒的な物量による低価格に対抗するには、これまで以上のコスト削減が必須となります。そのため人件費が安い東南アジアなどへの工場移転は、競争力を高める点でも完成品メーカーとしてとても魅力的なのは確かであり、生き残るための残された道でもあります。
下請け会社には「いつまでもメーカーから受注がある」という怠慢な経営方針だったことに責任はありますが、これまでの日本経済を影で支えてきた高い技術力を持つ下請け会社がなくなってしまうのは残念なことですね。
なので、こういった事が継続的取引のリスクだと言えるのでしょう。そのため、下請け会社は『脱下請け』を自らに課し、生き残る策として独自製品を自社開発する企業も出てきています。こういった企業努力により、これまでの高い技術力を継承していったもらいたいですね。
おしまい。