黒田総裁記者会見中継の質疑応答まとめ2014/6/13


今回の金融政策決定会合では、これまで通りの政策を維持するとし、特にサプライズはありませんでした。
6月13日公表分はこちら→日銀HPのPDF

質疑応答まとめ

政府の方では成長戦略『骨太の方針』の取りまとめの作業が佳境に入っていますが、日本銀行としては潜在成長率底上げに向けた政府の取り組みに対する期待と政府との役割分担をどのように考えているか?
中期的に見た経済の成長力というのは、基本的に資本ストックや労働投入の伸びに加えて、イノベーションなどを通じた生産性の向上によって決定されるというふうに考えております。

従って、成長力を引き上げていくためには企業における前向きな投資を促す、さらには、女性や高齢者などの労働参加を高める事や、高度な外国人材を活用することを通じて、労働の供給力を高めていく事。そして、規制・制度改革と通じて生産性を向上させるという事が重要な課題となると思います。

こうした課題に対して現在政府は、日本再興戦略の実行を加速するという事と共に、その後の議論も加えて、新しい成長戦略の取りまとめを進めているというふうに伺っておりまして、日本銀行としては、これらに基づく取り組みが着実に進む事を強く期待しております。また、先程申し上げような、企業による積極的な投資、あるいは、生産性向上に向けた取り組みを促すためには、人々に定着しているデフレマインドを払拭するという事も極めて重要でありまして、日本銀行としては、量的質的金融緩和の着実な推進により2%の物価安定目標を出来るだけ早期に達成するという事を通じて、貢献していきたいというふうに考えております。

先日ECB(欧州中央銀行)がマイナス金利を含めてた政策パッケージを発表されました。総裁としてこの欧州のデフレ懸念・デフレリスクについてどのようにお考えですか?
ご指摘のように、ECBがマイナス金利、あるいは貸出しの促進・貸出金利の低下を狙った新型オペの導入といった政策パッケージを決定致しました。

これは金利の引き下げ、あるいは金融政策の波及メカニズムの改善によって金融環境の緩和度合いを強めるといったものだと理解しております。確かに、ユーロ圏の物価情勢を見ますと、1%を下回る消費者物価の上昇率が半年以上も続いているという事。さらには、先行きもマクロ的な需給ギャップが残るもとで、物価が上昇しにくい状況が続くというふうに見られている訳であります。

もっとも、ECBは、中長期的なインフレ予想が安価されているという事を強調すると共に、今後もそれを保つ事に強くコミットをしておりまして、今回の金融政策パッケージもその現れだと思いますけれども、景気が緩やかに回復しているという事も合わせて見ますと、私共としては、ユーロ圏全体としてデフレに陥るリスクは低いというふうに見ております。いずれにせよ、今後ともユーロ圏の経済状況については注視をしていきたいと思っております。

成長戦略について2点。
1.総裁も経済財政諮問会議に出られて議論されてると思いますが、法人税減税を安倍政権は現在30%代半ばの税率を今後数年で20%台にするという方針を出していますが、代替財源は今後議論という事で決まっておりません。総裁も恒久的な減税であれば代替財源が必要だ、という意見だと思いますが、この点について、効果と問題点についてどうお考えなのか?

2.成長戦略の中で、年金のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用改革について、いろんな見方があると思いますが、リスクが高いという見方がある一方で、リスク資産に振り分ける必要があるという意見もあると思いますが、総裁はどうお考えでしょうか?

第1点の法人税減税そのものにつきましては、そもそも税制の具体的な改革内容であるとか、そういう事は政府とか国会で議論されるべきものでありまして、私の立場から具体的にコメントする事は差し控えたいと思いますけれども、その上で、財政に関する一般論として、やはり持続可能な財政構造を確立するという事は財政にとって重要であるでけでなく、日本経済が持続的な成長を達成していく上で必須の前提でありあますので、これは国全体として取り組むべき課題であると思っております。

この点、政府はご承知の通り、中期財政計画で財政の健全化に向けた数値目標と、その達成に向けた取り組みを示しておりまして、日本銀行としてはこれが、着実に実行されていくという事を強く期待をしております。

それから、GPIFの運用改革等、GPIFの問題につきましては、私から何か具体的な事を申し上げる立場にございませんので、特に何かコメントする事は差し控えたいというふうに思っております。

消費税の増税の影響について。増税から2ヶ月が経ち、だいぶ反動データも出てきている訳ですが、総裁は駆け込み需要の反動減は想定通りだと話していましたが、具体的にどういうデータをもとにどう判断をされているかを教えて下さい。

日銀の4月の展望リポートでは、夏場にかけて消費増税の影響は減衰して、7-9月期から成長軌道に戻るという見通しだと思いますが、そういう日本銀行の見通しが消費増税を乗り越えて達成される角度というのは、先月5月の決定会合の際より高まっていると言えるのでしょうか?

言葉を変えれば、4月の消費増税に伴う景気の下押し圧力は乗り越えるメドが付いたと判断していますか?

相互に関連したご質問だと思いますが、まず第1点につきましては、すでに色々な形で経済指標も出ておりますし、企業からの発言も色々あるようですが、4月に入ってからの消費動向全体としますと、確かに自動車など駆け込み需要が非常に大きかった耐久消費財を中心に反動減がハッキリと現れております。

ただ企業からは、反動減の大きさは概ね想定の範囲内である。消費の基調的な底堅さは維持されている。という様な声が多いようであります。

こうした見方は、景気ウォッチャー調査などにおいても2~3ヶ月先の先行き判断DIがハッキリと改善しているという事にも現れている様に思います。以上の事を踏まえますと、4-6月の成長率は反動の影響からマイナスに一旦落ち込むというふうに予想しておりますけれども、ベア実施(ベースアップ=賃上げ)を決めた企業が増えて、夏のボーナスもハッキリと増加する見込みにあるといった事など、雇用所得環境の明確な改善が続くと見込まれておりまして、個人消費の基調的な底堅さは維持されて、夏場以降、駆け込み需要の反動減の影響も減衰していくのではないかというふうに見ておりまして、そうしたもとで、潜在成長率を上回る成長経路に我が国経済は復していくだろうというふうに見ております。

景気ウォッチャー調査先行き判断DI画像
(参考元:内閣府HP)

そういった意味で、4月の消費税増税後の景気の見方というのは今申し上げた様な訳なんですけれども、その2番目の夏場以降の回復の角度がどうかと言われますと、私どもは、夏場以降、反動の影響も減衰し、潜在成長率を上回る成長経路に次第に復していくというふうに見ておりまして、そういう意味では確実だと思っておりますけれども、色々なリスク要因もあり得る訳ですので、やはり今後とも各種の経済統計を良く詳細にフォローするという事と共に、ヒアリング情報も含めて利用可能な情報を出来る限り活用して、やはり丹念に点検していくという必要があると思いますが、先程申し上げ通り、夏場以降、反動減の影響が減衰していき、次第に潜在成長率を上回る成長経路に復帰するという事は角度が高いというふうに思っております。

4月のコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)について。消費増税の影響を除く数値で1.5%という事で、展望リポートで示した今年度の見通しが1.3%である事を考えれば、4月だけで見ると上振れていると思われますが、この4月が若干上振れいる要因と、物価と成長のバランスが崩れているという懸念はありますか?
確かに4月に、消費増税の直接的な影響を除いた所で、除く生鮮食品の消費者物価指数が1.5%の上昇を示したという事は、一般に想定されていたよりも若干上振れたのかも知れません。

ただ、月々の物価上昇率というのはある程度”振れ”がありますので、趨勢(すうせい)というかトレンドを見ていく必要があると思っております。

そうした面で言いますと、今日公表しました『当面の金融政策運営について』というペーパーでも示しております様に、消費者物価の前年比はしばらくの間1%台前半で推移するというふうに見ております。ある程度、幅を持って見ていく必要があると思いますし、1.5%というのがずっと続くというふうに見る必要な無いと思っております。

2番目のバランスうんぬんですが、経済の実質成長率は6四半期連続プラスという事で、1-3月の実質成長率は駆け込みも含まれておりますのでかなり上振れしてる訳ですし、4-6月は先程申し上げたようにマイナス成長なると思われますけれども、成長全体として内需を中心に着実に回復をして来ていると、緩やかではあるけれど回復は続いている、という意味では特にバランスが取れてないという事は無いと思いますが、一点申し上げると、輸出がやや多くの人が想定していたより弱目に出てる事は事実でありまして、その辺りは今後ともよく見ていく必要があるというふうに思っております。

足元イラク情勢がやや緊迫しており、原油価格および株価の下落といった事になっていますが、総裁はこのリスクどのように考えていますか?
昨日の今日という事ですので、特別な事を申し上げる立場にはありませんが、やはりイラクは世界に石油を供給している需要な国の1つではありますので、いわゆる地政学的リスクがどのように動くかという事は十分注意して見ていかなければならないと思ってますが、今すぐ何か特別な事を申し上げる事は出来ませんけども、確かに十分注意していく必要があると思っております。
テレ東豊島キャスター
ECBのマイナス金利について総裁の評価を教えて下さい。準備預金金利をマイナスにするという事は効果がどれだけ出るか不透明だとも言われていますが、金融政策の実効性として効果はどういったものがあるとお考えでしょうか?

また、世界的には金利の低下圧力で、為替市場にとってはやや円高方向の圧力になると思うんですけれども、物価の上昇には円安の進行がある程度必要と言われますが、ECBなど緩和が長期化して日銀のシナリオに何か影響を与えてくる事は考えていますか?

もう1点、物価の伸びについて、当面1%代という事なんですけれども、いずれ鈍化するという見方もある中で、現在の金融政策のままで秋口~年後半もインフレ率は少なくとも1%台は維持できるとお考えか改めて教えて下さい。

マイナス金利というのは、かつてヨーロッパでも例があった事はあった訳ですけれども、ユーロ圏という非常に大きな経済の中央銀行であるECBが準備預金に対する金利をマイナスにしたというのは、大きな経済主体を見ている中央銀行としては初めての事ですので、そういう意味では注目されるのは当然だと思います。

先程申し上げように今回の政策パッケージは全体として、単にその中銀預け金のマイナスという事だけではなくて、政策金利も引き下げてますし、それから貸出しの促進とか貸出金利の低下を狙った新型オペの導入その他で、かなり様々な手段を動員した金融緩和パッケージでありますので、これはそれなりにディスインフレ状況にあるユーロ圏についてプラスの効果が期待されるものではないかと思いますが、いずれにせよ導入してまだ間がない訳ですので欧州の金融市場であるとか、あるいは実体経済の動向をもう少し見ていく必要はあるは思っております。

もう1つの日本の物価上昇率の今後の動向ですが、先程申し上げように、1.5%というのは若干みんなが予期してたのよりも上振れてる可能性はあるとは思いますが、月々若干変動しますので、あまり1.5%がずーと続かなければならないというふうに考える必要も無いと思いますが、私共は当分の間、1%台前半で上下しながら推移して、年度後半から上昇率を高めていって、2015年度を中心に、見通し期間の中盤頃に2%に達するというふうに見ておりまして、そういった考え方には、従来から持っている考え方ですが、それには変わりはありません。

物価の動向は常に注視しておりますし、2%の物価安定目標との関連で言いますと”まだ道半ば”ですので、量的質的金融緩和を着実に推進して先程申し上げような見通しに沿った形で2%の物価安定目標が達成される事を期待しているし、かつ、そうしなければならないというふうに思っております。

今後の資産買入れについて。日銀は2015年度以降の資産買入れの見通しを公表していませんが、総裁は現在の政策はオープンエンドというふうに仰っています。そうであれば、今後も物価が日銀の見通しに沿って推移する場合、目標が達成されるまでの期間は2015年の1月以降、これも今の資産買入れを続けられると理解していいのか?

消費税率引き上げの所得への影響について。増税の影響としては先程、反動減については想定通りと仰られていますが、やはり実質所得の減少という面があるあると思うんですけれども、この辺が今後の個人消費やマインドに与える影響。足元で、原油価格なども上昇している点を踏まえてどのようにお考えですか?

昨年の4月4日に量的質的金融緩和を導入した際の文書にもありましたし、毎月のように行われております金融政策決定会合後の文書にも示しております通り、量的質的金融緩和というのは2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的質的金融緩和すると言っておりますので、何かカレンダーで何月までとかいうふうに決まっておるのではなくて、そういった意味でオープンエンドで、あくまでも2%の物価安定目標の実現、そしてそれを安定的に持続するために必要な時点まで続けるという事に変わりはございませんので、2015年になったら2%にも達してないのに、あるいは安定的に持続するという様な状況になってないのに量的質的金融緩和をやめるというような事はありません。

消費税増税の実質所得への影響という事ですが、ご指摘のように駆け込みと反動減というのは、理念的に言いますと基本的にはチャラになる話なわけです。

ですから、経済の実態つまりGDPとか成長率には、短期的にはともかく影響がないという事になるわけですが、じゃあ中長期的にどうかと言えば、ご指摘のように税負担の増加ですので、これは消費税であれ所得税であれ同じ事なんですけれども、実質可処分所得が減少して消費に影響が出るという事は、その面だけとればその通りであります。ただ他方で、ご存知のように、今回の消費税の増税にあたっては、政府も影響を緩和するための様々な措置を取っておりますので、それによってマイナスは相当緩和されている可能性はあります。

それからさらに、より本格的に中長期的に見れば、こうした事によって財政全体の持続可能性が増し、例えば社会保障などについての信頼性を増すという事になってくれば、むしろそれが消費を支える事になるというプラスの面もありますので、必ずしも消費税の増税が、中長期的に消費あるいは成長率の伸びを抑えるという事にはならないと思います。

輸出関連について。4月の展望リポートでも、先行き”輸出が緩やかに回復する”という事を前提にしていると思いますが、前提の大きさは委員の方で違うと思うんですけれども、現実4月の輸出統計も結構弱目で、この間出た上中旬のデータも弱かった訳ですが、5月の全体は来週出ますけども、この輸出が出ない事によって成長率に何かしらの下押しが働くと思いますが、それが物価への影響を現状どう見られていますか?
また昨年の様に、生産性の悪い非製造業が活発化すれば成長率が下振れても物価はポーントラック?←(よく聞き取れなかったので不明)この可能性も続くのかどうか教えてください。
実質成長率は、様々な要因で決まってきますので、輸出が予期したほど伸びなくても内需が予期した以上に伸びれば、実質成長率は予期したよりも上振れするかも知れませんし、特定の要素だけ取って他のものが変わらないとすれば、それが予想よりも伸びなければ全体も伸びなくなるはずですけれども、全体が伸びなくなるかどうかは先程申し上げた通り、他の各内需その他の要因にもよりますので一概には言えないと思います。

現に最近、4月の輸出は若干伸びた訳ですけれども、多くの人が期待したほど伸びなかったというのは事実でありまして、そこにはこの1-3月、米国の成長率がマイナスになったという事もありますし、世界経済として見ても、かなり成長率が下がっておりまして、それが日本を含めて輸出に若干の影響が出てきた事は否めない訳でして、それは成長率の一時的な低下が輸出の一時的な低下に結びつく間に若干のラグがありますので、もう少し5月・6月と見ていく必要があるというふうには思っております。

いずれにしましても、輸出の動向につきましては、日本の輸出の主要な市場であるアジア・米国等の経済動向をよく点検していく必要があるというふうには思っておりますが、輸出の回復の時点が少し後ズレした可能性はありますけれども、輸出が全体として回復しないというふうには見ておりません。

それは先程申し上げ様に、1-3月は一時的に世界経済の成長率がかなりダウンしましたけれども、米国は明確に成長率が上昇しておりますし、今後さらに加速していくだろうというのが私共の見方であり多くの見方ですし、中国経済を見ますと、成長率のモメンタムの下方シフトみたいなものがが止まって、ハッキリと安定成長の状況が出てきておりますので、米国を中心に先進国の経済成長が加速していき、中国その他の新興市場国の成長率も安定的に高い水準で維持されるというふうに私共は見ておりますし、IMF(国際通貨基金)・世界銀行とも見ているようですけれども、そういうシナリオに沿って世界経済が動いていく限り、日本の輸出も緩やかではあるけれども増加していくというふうに見て良いのではないかと思っております。

成長について。今足元で設備投資などが増えておりまして、経済の供給力の向上という事でこれから貢献してくるかとは思うんですけれども、最近総裁と副総裁を含めて、政府の成長戦略への期待や、供給力の向上といった事が必要だという話が増えているかと思うんですけれども、こういった事について、潜在成長率が上がらないと物価が上がらないというふうに日銀が考え始めているんではないかという”うがった見方”もありますが、そういった事について総裁どういうお考えでしょうか?
それはうがった見方というか間違った見方だと私は思います。私共は別に成長率が下がると物価安定目標は達成出来たいというふうに考えておりませんで、あくまでも、量的質的金融緩和を着実に推進する事によって2%の物価安定目標は達成出来るというふうに見ております。

ただ一方で、物価は2%を達成するけれども実質成長率は非常に低いままだとか、そういう事は好ましくない訳でして、予想以上のスピードで労働の需給がタイトになり、GDPギャップが縮小して来ている訳ですので、やはり中長期的に見て成長率を高めていくための政府・民間の努力という事は極めて重要であるというふうに思っております。

一方日本銀行としても先程申し上げ様に、デフレマインドが残っているとなかなか企業が前向きな投資を行わない、あるいは生産性向上に向けた様々な取り組みをやりにくいという面があった訳ですので、それを払拭して積極的な投資、生産性向上に向けた前向きな取り組みを促すという事によって、潜在成長率の押上にも何がしかの貢献が出来るのではないかと思っておりますけれども、やはり基本的には、中央銀行は物価安定を達成し、政府は民間主導の経済成長を達成するための努力をするという事だと思いますし、それが昨年1月の政府と日本銀行の共同声明でも示されている訳でありまして、今ご指摘のような”うがった見方”というのがまさにうがっていて、あまり当たってないというふうに思っております。笑顔

先月の会見で、為替相場について円高になる理由はない、と仰られましたが、???←(よく聞き取れなかったので不明)ユーロと円についても同じような考えなのか?
ユーロ圏の物価上昇率が今のところ1%を割った状況が半年以上続いて、今後ともECBの見通しでも中期的に中々ECBが目標としている2%に近い2%以下の物価上昇という所に達しないという様な事がある訳ですし、また今回のECBの追加緩和パッケージも出された訳でありますし、そういった状況が為替レートにどういう影響を与えるかと、ユーロ/円にどういう影響を与えるかという事は色んな議論が出来ると思いますが、常に私申し上げてますけれども、為替レートというのは色んなファクターで影響されますので、なかなか一概には言えないとは思うんですけれども、一方で我が国の2%の物価安定目標に向けた道筋も着実に辿っているとは言え、まだ道半ばでありますし、量的質的金融緩和というのは、2%の物価安定目標を実現しそれを安定的に持続出来るようになるまで続ける訳ですし、そういった事から言うと、ユーロ/円について何か円が特にユーロとの関係で強くならなければならないという理由もないように思われますし、リーマンショック前のレベルと比べますと、今のユーロ/円のレベルというのはユーロがかなり安い・低い状況にありますので、いろいろ勘案しますと、この間のマイナス金利を含むECBの追加緩和によって何か円がユーロに対して特に強くならなければならないという事は無いのではないのかと思っております。
先日白井氏が会見をされましたが、日銀の中心的な見通しとしては、消費者物価指数が15年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高いというふうになっていますけれども、白井氏はそれからほぼ1年くらい遅れるという様なご自身の見通しを示されました。

多分これ→www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405d.pdf

その上で、追加緩和が必要ないかという質問に対して、ご自身の見通しから後ズレあるいは下振れるような事があれば必要かも知れない。

裏を返せば、日銀の中心的な見通しに比べ1年遅い見通しが実現するのであれば追加緩和が必要ないのではないかという事を示唆された訳ですけれども、黒田総裁の中心的な考えとして15年を中心とする期間から1年も遅れるという様な事になれば、これは追加緩和が必要だとお考えになるのかどうか?

何度も申し上げてます様に、2%の物価安定目標に関しては、昨年の4月4日の導入時に申し上げて通り、私共の意図としては、出来るだけ早期に2年程度の期間を念頭に置いて、2%を達成するのに必要にして十分な金融緩和を導入した訳であります。

その後、着実に2%への物価上昇の道筋を辿っているというふうに見ておりまして、この所、政策委員の見通しの数字も、成長率については若干”振れ”がありましたけれども、物価上昇率の見通しについては政策委員の中央値というのは変わっておりません。

従いまして、先日の展望リポートの文書にあります様に、見通し期間14~16年までの見通し期間の中盤頃、ですから2015年を中心とした時期に物価安定目標である2%に達する可能性が高いというふうに見ておりまして、今申し上げて様な幅はある訳ですけれども、政策委員の大層の見方は今のような見方であると言って良いかと思っております。

そういった見方・見通しと違った上振れでも下振れでも、上下双方向のリスクが出てくれば当然、躊躇なく政策についての調整を行うという事も申し上げている通りでありまして、この点についても政策委員の方々の考え方は大方維持していると思っております。

安倍総理が来年度からの法人税の減税を表明されましたので改めて確認しますが、法人減税がはたして日本経済の成長の底上げにどの位の効果があるのか総裁のお考えは?

先程ハッキリお答えにならなかったので改めて確認しますが、恒久的な代替財源が必要という意見に代わりはないか?

税制改正の経済的な効果というのは色んな形で分析が出来ると思いますけれども、法人税の減税につきましても色々な分析がありまして、法人税減税の部分だけ取った場合、それが設備投資とかR&D(研究開発«research and Development»)への投資を促進し、経済成長にとってプラスになるだろうという分析結果というのは、一般的に認められていると思いますが、他方で、その部分だけ取って見るというのは、実際は現実の政策としては無いわけでして、そうすれば財政赤字が拡大するのをどうするかとか、あるいは財政赤字が拡大しないように代替財源を例えば具体的に何かの税を増税するとか、歳出をカットするという様な事になれば、そちらの影響も勘案しないといけませんので、それら全体として勘案した場合に、どういうふうになるのかっというのは、そう簡単ではないと思います。ただ法人税減税の部分だけ取り出して見れば、それは投資を促進し、洗剤成長率を押し上げるという効果があるという事は間違いないというふうに思っております。

なお、減税については恒久的な財源の措置が必要であるというのは私は当然であると思っておりますけれども、いずれにせよ具体的にどういった税制改正を行うのか、あるいはその財源をどのように求めるのかといった事は政府・国会で議論し決められる事であるというふうに思っております。

今回も文章に起こしてみましたが、日銀のHPにPDFが公開されるので、悲しい事ですがほとんど意味がないです。ただ、文にするとよく理解できる気がするので、こういった意味では有意義であると思います。個人的に、記者の人達にもう少しゆっくり質問してもらいたいです。
公表されたPDF www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1406b.pdf

あと、毎日見ているテレビ東京のワールドビジネスサテライトの豊島キャスターが質問していて、なんか嬉しかったです。

おしまい。


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