今回の金融政策決定会合では、これまで通りの政策を維持するとし、特にサプライズはありませんでした。
6月13日公表分はこちら→日銀HPのPDF
質疑応答まとめ
従って、成長力を引き上げていくためには企業における前向きな投資を促す、さらには、女性や高齢者などの労働参加を高める事や、高度な外国人材を活用することを通じて、労働の供給力を高めていく事。そして、規制・制度改革と通じて生産性を向上させるという事が重要な課題となると思います。
こうした課題に対して現在政府は、日本再興戦略の実行を加速するという事と共に、その後の議論も加えて、新しい成長戦略の取りまとめを進めているというふうに伺っておりまして、日本銀行としては、これらに基づく取り組みが着実に進む事を強く期待しております。また、先程申し上げような、企業による積極的な投資、あるいは、生産性向上に向けた取り組みを促すためには、人々に定着しているデフレマインドを払拭するという事も極めて重要でありまして、日本銀行としては、量的質的金融緩和の着実な推進により2%の物価安定目標を出来るだけ早期に達成するという事を通じて、貢献していきたいというふうに考えております。
これは金利の引き下げ、あるいは金融政策の波及メカニズムの改善によって金融環境の緩和度合いを強めるといったものだと理解しております。確かに、ユーロ圏の物価情勢を見ますと、1%を下回る消費者物価の上昇率が半年以上も続いているという事。さらには、先行きもマクロ的な需給ギャップが残るもとで、物価が上昇しにくい状況が続くというふうに見られている訳であります。
もっとも、ECBは、中長期的なインフレ予想が安価されているという事を強調すると共に、今後もそれを保つ事に強くコミットをしておりまして、今回の金融政策パッケージもその現れだと思いますけれども、景気が緩やかに回復しているという事も合わせて見ますと、私共としては、ユーロ圏全体としてデフレに陥るリスクは低いというふうに見ております。いずれにせよ、今後ともユーロ圏の経済状況については注視をしていきたいと思っております。
1.総裁も経済財政諮問会議に出られて議論されてると思いますが、法人税減税を安倍政権は現在30%代半ばの税率を今後数年で20%台にするという方針を出していますが、代替財源は今後議論という事で決まっておりません。総裁も恒久的な減税であれば代替財源が必要だ、という意見だと思いますが、この点について、効果と問題点についてどうお考えなのか?
2.成長戦略の中で、年金のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用改革について、いろんな見方があると思いますが、リスクが高いという見方がある一方で、リスク資産に振り分ける必要があるという意見もあると思いますが、総裁はどうお考えでしょうか?
この点、政府はご承知の通り、中期財政計画で財政の健全化に向けた数値目標と、その達成に向けた取り組みを示しておりまして、日本銀行としてはこれが、着実に実行されていくという事を強く期待をしております。
それから、GPIFの運用改革等、GPIFの問題につきましては、私から何か具体的な事を申し上げる立場にございませんので、特に何かコメントする事は差し控えたいというふうに思っております。
日銀の4月の展望リポートでは、夏場にかけて消費増税の影響は減衰して、7-9月期から成長軌道に戻るという見通しだと思いますが、そういう日本銀行の見通しが消費増税を乗り越えて達成される角度というのは、先月5月の決定会合の際より高まっていると言えるのでしょうか?
言葉を変えれば、4月の消費増税に伴う景気の下押し圧力は乗り越えるメドが付いたと判断していますか?
ただ企業からは、反動減の大きさは概ね想定の範囲内である。消費の基調的な底堅さは維持されている。という様な声が多いようであります。
こうした見方は、景気ウォッチャー調査などにおいても2~3ヶ月先の先行き判断DIがハッキリと改善しているという事にも現れている様に思います。以上の事を踏まえますと、4-6月の成長率は反動の影響からマイナスに一旦落ち込むというふうに予想しておりますけれども、ベア実施(ベースアップ=賃上げ)を決めた企業が増えて、夏のボーナスもハッキリと増加する見込みにあるといった事など、雇用所得環境の明確な改善が続くと見込まれておりまして、個人消費の基調的な底堅さは維持されて、夏場以降、駆け込み需要の反動減の影響も減衰していくのではないかというふうに見ておりまして、そうしたもとで、潜在成長率を上回る成長経路に我が国経済は復していくだろうというふうに見ております。

そういった意味で、4月の消費税増税後の景気の見方というのは今申し上げた様な訳なんですけれども、その2番目の夏場以降の回復の角度がどうかと言われますと、私どもは、夏場以降、反動の影響も減衰し、潜在成長率を上回る成長経路に次第に復していくというふうに見ておりまして、そういう意味では確実だと思っておりますけれども、色々なリスク要因もあり得る訳ですので、やはり今後とも各種の経済統計を良く詳細にフォローするという事と共に、ヒアリング情報も含めて利用可能な情報を出来る限り活用して、やはり丹念に点検していくという必要があると思いますが、先程申し上げ通り、夏場以降、反動減の影響が減衰していき、次第に潜在成長率を上回る成長経路に復帰するという事は角度が高いというふうに思っております。
ただ、月々の物価上昇率というのはある程度”振れ”がありますので、趨勢(すうせい)というかトレンドを見ていく必要があると思っております。
そうした面で言いますと、今日公表しました『当面の金融政策運営について』というペーパーでも示しております様に、消費者物価の前年比はしばらくの間1%台前半で推移するというふうに見ております。ある程度、幅を持って見ていく必要があると思いますし、1.5%というのがずっと続くというふうに見る必要な無いと思っております。
2番目のバランスうんぬんですが、経済の実質成長率は6四半期連続プラスという事で、1-3月の実質成長率は駆け込みも含まれておりますのでかなり上振れしてる訳ですし、4-6月は先程申し上げたようにマイナス成長なると思われますけれども、成長全体として内需を中心に着実に回復をして来ていると、緩やかではあるけれど回復は続いている、という意味では特にバランスが取れてないという事は無いと思いますが、一点申し上げると、輸出がやや多くの人が想定していたより弱目に出てる事は事実でありまして、その辺りは今後ともよく見ていく必要があるというふうに思っております。
ECBのマイナス金利について総裁の評価を教えて下さい。準備預金金利をマイナスにするという事は効果がどれだけ出るか不透明だとも言われていますが、金融政策の実効性として効果はどういったものがあるとお考えでしょうか?
また、世界的には金利の低下圧力で、為替市場にとってはやや円高方向の圧力になると思うんですけれども、物価の上昇には円安の進行がある程度必要と言われますが、ECBなど緩和が長期化して日銀のシナリオに何か影響を与えてくる事は考えていますか?
もう1点、物価の伸びについて、当面1%代という事なんですけれども、いずれ鈍化するという見方もある中で、現在の金融政策のままで秋口~年後半もインフレ率は少なくとも1%台は維持できるとお考えか改めて教えて下さい。
先程申し上げように今回の政策パッケージは全体として、単にその中銀預け金のマイナスという事だけではなくて、政策金利も引き下げてますし、それから貸出しの促進とか貸出金利の低下を狙った新型オペの導入その他で、かなり様々な手段を動員した金融緩和パッケージでありますので、これはそれなりにディスインフレ状況にあるユーロ圏についてプラスの効果が期待されるものではないかと思いますが、いずれにせよ導入してまだ間がない訳ですので欧州の金融市場であるとか、あるいは実体経済の動向をもう少し見ていく必要はあるは思っております。
もう1つの日本の物価上昇率の今後の動向ですが、先程申し上げように、1.5%というのは若干みんなが予期してたのよりも上振れてる可能性はあるとは思いますが、月々若干変動しますので、あまり1.5%がずーと続かなければならないというふうに考える必要も無いと思いますが、私共は当分の間、1%台前半で上下しながら推移して、年度後半から上昇率を高めていって、2015年度を中心に、見通し期間の中盤頃に2%に達するというふうに見ておりまして、そういった考え方には、従来から持っている考え方ですが、それには変わりはありません。
物価の動向は常に注視しておりますし、2%の物価安定目標との関連で言いますと”まだ道半ば”ですので、量的質的金融緩和を着実に推進して先程申し上げような見通しに沿った形で2%の物価安定目標が達成される事を期待しているし、かつ、そうしなければならないというふうに思っております。
消費税率引き上げの所得への影響について。増税の影響としては先程、反動減については想定通りと仰られていますが、やはり実質所得の減少という面があるあると思うんですけれども、この辺が今後の個人消費やマインドに与える影響。足元で、原油価格なども上昇している点を踏まえてどのようにお考えですか?
消費税増税の実質所得への影響という事ですが、ご指摘のように駆け込みと反動減というのは、理念的に言いますと基本的にはチャラになる話なわけです。
ですから、経済の実態つまりGDPとか成長率には、短期的にはともかく影響がないという事になるわけですが、じゃあ中長期的にどうかと言えば、ご指摘のように税負担の増加ですので、これは消費税であれ所得税であれ同じ事なんですけれども、実質可処分所得が減少して消費に影響が出るという事は、その面だけとればその通りであります。ただ他方で、ご存知のように、今回の消費税の増税にあたっては、政府も影響を緩和するための様々な措置を取っておりますので、それによってマイナスは相当緩和されている可能性はあります。
それからさらに、より本格的に中長期的に見れば、こうした事によって財政全体の持続可能性が増し、例えば社会保障などについての信頼性を増すという事になってくれば、むしろそれが消費を支える事になるというプラスの面もありますので、必ずしも消費税の増税が、中長期的に消費あるいは成長率の伸びを抑えるという事にはならないと思います。
また昨年の様に、生産性の悪い非製造業が活発化すれば成長率が下振れても物価はポーントラック?←(よく聞き取れなかったので不明)この可能性も続くのかどうか教えてください。
現に最近、4月の輸出は若干伸びた訳ですけれども、多くの人が期待したほど伸びなかったというのは事実でありまして、そこにはこの1-3月、米国の成長率がマイナスになったという事もありますし、世界経済として見ても、かなり成長率が下がっておりまして、それが日本を含めて輸出に若干の影響が出てきた事は否めない訳でして、それは成長率の一時的な低下が輸出の一時的な低下に結びつく間に若干のラグがありますので、もう少し5月・6月と見ていく必要があるというふうには思っております。
いずれにしましても、輸出の動向につきましては、日本の輸出の主要な市場であるアジア・米国等の経済動向をよく点検していく必要があるというふうには思っておりますが、輸出の回復の時点が少し後ズレした可能性はありますけれども、輸出が全体として回復しないというふうには見ておりません。
それは先程申し上げ様に、1-3月は一時的に世界経済の成長率がかなりダウンしましたけれども、米国は明確に成長率が上昇しておりますし、今後さらに加速していくだろうというのが私共の見方であり多くの見方ですし、中国経済を見ますと、成長率のモメンタムの下方シフトみたいなものがが止まって、ハッキリと安定成長の状況が出てきておりますので、米国を中心に先進国の経済成長が加速していき、中国その他の新興市場国の成長率も安定的に高い水準で維持されるというふうに私共は見ておりますし、IMF(国際通貨基金)・世界銀行とも見ているようですけれども、そういうシナリオに沿って世界経済が動いていく限り、日本の輸出も緩やかではあるけれども増加していくというふうに見て良いのではないかと思っております。
ただ一方で、物価は2%を達成するけれども実質成長率は非常に低いままだとか、そういう事は好ましくない訳でして、予想以上のスピードで労働の需給がタイトになり、GDPギャップが縮小して来ている訳ですので、やはり中長期的に見て成長率を高めていくための政府・民間の努力という事は極めて重要であるというふうに思っております。
一方日本銀行としても先程申し上げ様に、デフレマインドが残っているとなかなか企業が前向きな投資を行わない、あるいは生産性向上に向けた様々な取り組みをやりにくいという面があった訳ですので、それを払拭して積極的な投資、生産性向上に向けた前向きな取り組みを促すという事によって、潜在成長率の押上にも何がしかの貢献が出来るのではないかと思っておりますけれども、やはり基本的には、中央銀行は物価安定を達成し、政府は民間主導の経済成長を達成するための努力をするという事だと思いますし、それが昨年1月の政府と日本銀行の共同声明でも示されている訳でありまして、今ご指摘のような”うがった見方”というのがまさにうがっていて、あまり当たってないというふうに思っております。笑顔
多分これ→www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405d.pdf
その上で、追加緩和が必要ないかという質問に対して、ご自身の見通しから後ズレあるいは下振れるような事があれば必要かも知れない。
裏を返せば、日銀の中心的な見通しに比べ1年遅い見通しが実現するのであれば追加緩和が必要ないのではないかという事を示唆された訳ですけれども、黒田総裁の中心的な考えとして15年を中心とする期間から1年も遅れるという様な事になれば、これは追加緩和が必要だとお考えになるのかどうか?
その後、着実に2%への物価上昇の道筋を辿っているというふうに見ておりまして、この所、政策委員の見通しの数字も、成長率については若干”振れ”がありましたけれども、物価上昇率の見通しについては政策委員の中央値というのは変わっておりません。
従いまして、先日の展望リポートの文書にあります様に、見通し期間14~16年までの見通し期間の中盤頃、ですから2015年を中心とした時期に物価安定目標である2%に達する可能性が高いというふうに見ておりまして、今申し上げて様な幅はある訳ですけれども、政策委員の大層の見方は今のような見方であると言って良いかと思っております。
そういった見方・見通しと違った上振れでも下振れでも、上下双方向のリスクが出てくれば当然、躊躇なく政策についての調整を行うという事も申し上げている通りでありまして、この点についても政策委員の方々の考え方は大方維持していると思っております。
先程ハッキリお答えにならなかったので改めて確認しますが、恒久的な代替財源が必要という意見に代わりはないか?
なお、減税については恒久的な財源の措置が必要であるというのは私は当然であると思っておりますけれども、いずれにせよ具体的にどういった税制改正を行うのか、あるいはその財源をどのように求めるのかといった事は政府・国会で議論し決められる事であるというふうに思っております。
今回も文章に起こしてみましたが、日銀のHPにPDFが公開されるので、悲しい事ですがほとんど意味がないです。ただ、文にするとよく理解できる気がするので、こういった意味では有意義であると思います。個人的に、記者の人達にもう少しゆっくり質問してもらいたいです。
公表されたPDF www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1406b.pdf
あと、毎日見ているテレビ東京のワールドビジネスサテライトの豊島キャスターが質問していて、なんか嬉しかったです。
おしまい。