黒田日銀総裁の記者会見質疑応答まとめ2014/5/21


今回は黒田総裁記者会見の質疑応答を記録します。
この記事は約一万文字あるので時間がある時に読んで下さい。

金融政策決定会合の内容は日銀発表のPDFと合わせて見て下さい。
金融政策決定会合2014/5/21

本日の決定会合の内容について

本日の決定会合では、マネタリーベースが年間約60~70兆円に相当するペースで増加するよう、金融市場調節を行う、という金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。

資産買入れに関しても、長期国債、ETF、J-REITなどの資産についてこれまでの買い入れ方針を継続することとしました。

わが国の景気ですが、4月入り後、耐久財などの個人消費を中心に、駆け込み需要の反動減が現れているものの、設備投資を含め国内需要は、基調としては堅調に推移しています。

そのもとで、景気の前向きな循環メカニズムは、雇用・所得環境の明確な改善を伴いながらしっかりと作用し続けています。

従って、景気の総括判断としては、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が見られているが、基調的には緩やかな回復を続けている、としました。

海外経済は、新興国の一部になお緩慢さを残していますが、米欧などの先進国を中心に回復しつつあります。

輸出はこのところ、横ばい圏内の動きとなっています。

設備投資は、1-3月期のGDPの設備投資が伸びを高めつつ、4四半期連続の増加を示すなど、企業収益が改善する中で、緩やかに増加しています。

公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きとなっています。

個人消費や住宅投資は、このところ駆け込み需要の反動が見られていますが、基調的には、雇用・所得環境が改善するもとで、底堅く推移しています。

以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどっています。

この間、わが国の金融環境は緩和した状態にあります。企業の資金調達コストは低水準で推移し、企業から見た金融機関の貸し出し態度は改善傾向が続いています。そうしたもとで、銀行貸出残高は中小企業向けも含め緩やかに増加しています。

物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、昨年12月から4ヶ月連続で+1.3%となるなど、1%代前半で推移しています。予想物価上昇率は全体として上昇していると判断されます。

わが国経済の先行きについては、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくと考えられます。

物価面では、消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースで見て、しばらくの間1%前半で推移すると見られます。

その後は、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、2014年度から2016年度までの見通しの中盤頃に、物価安定の目標である2%程度に達する可能性が高いと見ています。

リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられます。

金融政策運営については、量的質的金融緩和は所期の効果を発揮しており、今後とも2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、量的質的金融緩和を継続します。

その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていく、という方針に変わりはありません。

質疑応答10問

日銀として、現在の物価情勢・日本経済はデフレではない、あるいはデフレから脱却していると見ているのか?
量的質的金融緩和の効果につきましては、展望レポートでかなり詳しく説明したところでございますけども、所期の効果を発揮しいると認識しております。

今回の対外公表文はこうした認識を踏まえたものでありまして、特別な事を申し上げている訳ではありません。

なおですね、デフレという言葉は一般的に物価が持続的に下落している状態を示すという風に理解していますけれども、その判断にあたっては背後にある経済の様々な動きと合わせて、色々な指標を総合的に点検していく必要があると思っております。

いずれに致しましても、日本銀行としては、物価安定の目標は消費者物価の前年比上昇率で2%というものでありまして、その実現のため強い決意を持って今後とも量的質的金融緩和を推進していく所存でございます。

日銀はこれまで通り、反動の影響は夏場には減衰すると見ているか?
反動が多少大きいというデータは出てきてないのか?
ご指摘のように、1-3月の実質GDP成長率は、個人消費の駆け込み需要の影響もあって大きく増加したわけですけども、さらにそれに加えて設備投資も伸びを高めた、という事がありまして、前年比年率5.9%となった訳であります。

4-6月期の成長率は、確かに駆け込み需要の反動の影響から個人消費が落ち込み、全体としてもマイナスになるという風に予想しております。

もっとも、雇用・所得環境が明確に改善するもとで、個人消費の基調的な底堅さは維持される、という風に見ておりまして、駆け込み需要の反動の影響も夏場以降は減衰していく展望レポートの見方に変わりはありません。

実際、4月入り後の消費動向につきましては、自動車など駆け込み需要が多かった耐久財を中心に反動減がハッキリ現れているようでありますが、企業からは反動減の大きさは概ね想定の範囲内であると、消費の基調的な底堅さは維持されている、という声が多いようであります。

また、百貨店やスーパーなどの小売業界からは、反動減の程度は徐々に縮小してきている、という声も聞かれております。

また、外食や旅行などのサービスは、消費税率引き上げの影響は限定的であり底堅い動きが続いている、というような声が多いようであります。

今申し上げたような見方は、4月の景気ウォッチャー調査においても、2~3ヶ月先の先行き判断DIがハッキリと改善している、という事にも現れているように思います。

いずれに致しましても、この消費税率引き上げの影響につきましては今後とも、各種の経済統計だけでなく、支店等を通じてヒアリングの情報を含めた様々な利用可能な情報を出来る限り集め活用して予断を持つことなく丹念に点検していきたいと思います。

金融市場の動向について、直近の株価の下落や円高になる中で、株高円安のトレンドが崩れたという指摘についてどう思われるか?
また、それが金融政策の運営上リスクになるか?
株式市場の動向につきましては、様々な要因によって日に日にあるいは週ごとに毎月影響を受ける訳でありまして、何か具体的な事を申し上げるのは避けたいと思いますけれども、前々から申し上げている通り、基本的には株価っていうものは企業収益の動向、先行きによって決まってくるところが大きいと思います。

日本の企業の収益は、2013年度は非常に大きな増加を見た訳ですが、2014年度もそこそこの増収になるという風に見られておりまして、そういった意味では、トレンドとしては何か株高の方向が全く変わったと、そういう事は感じておりません。

為替はもっと色々な要素によって影響され、特に内外の外国の情勢に影響されますので、なかなか具体的なことは申し上げにくい訳ですけれども、日本経済は緩やかな回復軌道に乗っておる訳ですけれども、まだ2%の物価安定目標に向けた道筋はなかば、といった所でありまして引き続き量的質的金融緩和を持続していく、という事でありますし、また他方で、米国経済を中心にかなり順調な回復が見られる所では、金融政策もテーパリングオフというか緩和の程度を段々縮めていっている訳でありますし、そういった内外の景気あるいは金融資本市場の動向を考えますと、なにか為替が特に円高になって行かなければならないという理由あまりない、という風に思います。

金融政策との関係では、どこの国でもそうですけれども、金融政策が株価とか為替にリンクして考えられているものではありません。

基本的に、物価安定目標というものをほとんどの中央銀行は定めて、それの達成・維持に努力しれいる訳ですが、その際には各種の経済指標を当然見ていく訳ですが、その場合に為替とか株の事も景気・経済に対する影響という観点から見ていくことは当然でございますけれども、基本的に中央銀行としては、物価安定目標というものを目標にして様々な経済指標を見ながら運営していくことだと思います。

公表文で「量的質的金融緩和について所期の効果を発揮している。」と明記する一方で、「日本経済が15年続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。」が抜けたことについて、実際に消費者物価が1%前半で推移している事を踏まえて、「デフレからの脱却に導くもの」という表現が時勢として合わなくなって来ている、という事を捉えての表現の変化なのか?

マーケットの中には一部「日銀による静かなる脱却宣言」という声もあるが、今回この表現を変えた意味合いを詳しく教えて下さい。

※実際に見比べてみてください。下のPDFの一番最後に掲載されています。

4/8公表文PDF
5/21公表文PDF

アメリカの長期金利低迷を受けて「アメリカ経済の回復の勢いは弱いんじゃないか」という見方もある中で、アメリカの金利低迷の背景やアメリカ経済の足元・今後についてどのように考えているか?

先程も申し上げた通り、展望レポートで詳しく議論致しましたし、現在の量的質的金融緩和を昨年の4月4日に導入して以来1年強経って、ご指摘のような、事態の流れというものも頭にあったことは事実ですが、何かサブスタンス(実態・内容)を変えたという事では全くありませんので、あくまでも1年1ヶ月ないし2ヶ月の状況を見て展望レポートでも、“2%の物価安定目標へ向けての道筋を順調にたどる”、という意味で“所期の効果を発揮している”、という風に申し上げた訳でして、それと同様な言い方をして、引き続き2%の物価安定の目標の実現を目指して、これを安定的に継続・持続するために必要な時点まで、この量的質的金融緩和を継続します。という従来通りの言い方を繰り返した訳でございます。

2番目の点は、ご承知のように、米国自体でも色々な議論があるようでありますが、私自身はこの1月から3月にかけての非常な寒波で経済が影響を受けて、第1四半期の米国のGDP成長率はほぼ横ばい位になった訳ですが、その後3月の後半から4月の動向を見ますと、完全にリバウンドしているというか非常に強い米国経済の成長というか回復の状況を示しておりますので、私自身は米国経済について何か特に心配しなければならない、という事はないと思っております。

もちろん、常にリスクとして考えておく必要はありますけども、これまでのところ非常に強い回復基調が続いておりまして、今後米国の成長率はさらに加速していくんじゃないか、と思っております。

一方で、その長期金利が一時3%代にのった訳ですけども、今は2%代半ば位に落ち着いてる、という事については色々な事だろうと思いますが、FRBの金融政策の進め方について市場が十分消化して、金利が急速に上がるという事が無い、という事がよく理解された事もあるのかなぁと、その他いろいろ内外の金融政策等が影響しているかも知れませんが、私自身は米国経済はしっかりしている、という風に思っております。

雇用・所得環境について、今回の決定会合で白石氏が雇用・所得環境の改善ペースについてリスクとして言及する必要がある、という反対を取り下げましたが、この辺の認識に変化があったのか?

一部深刻な人手不足が流通や建設でありますが、この人手不足が供給力の面から今後経済成長率に何かしら影響はあるか?

白井委員のご意見うんぬんについては、特に私から申し上げる事は避けますが、雇用・所得環境の状況はご案内の通りまず第一に、いわゆる春闘がもう相当進んできておりまして、大企業のみならず中小企業まで含めてベアを含む賃上げがかなり広がってきている、という事もございますし、それから雇用環境は引き続き改善が続いておりまして、有効求人倍率も1.07倍という事でリーマン・ショック前のピーク並になってきているという事で、雇用・所得環境が改善してきてる。

そのペースが引き続き続いているという事は広く経団連とか連合とか色々な形でデータを出しておりますけども、そういう事がよりハッキリしてきたという事は言えると思います。

人手不足の問題は、確かに労働市場が非常にタイトになってきておりますので、賃金が上がりやすくなっている、という事も事実ですし、一部のセクターで特に人手不足から、例えば建設業などで建設が遅れる、というそうゆう様な状況も有るやに伺っておりますので、これは今後非常に重要な課題になると思っております。

そもそも、人口が減りあるいは高齢化が進んでいくという中で、人手不足あるいは潜在成長率の低下という事が問題になる可能性があった訳ですが、需要が弱い時は人手不足とか供給制約といった形で問題が表面化してなかった訳です。

それがこの1年ほどの間に、金融緩和、財政支出、民間活動の活性化といった事で需要が高まってきた結果、水面下に隠れていた供給力の問題あるいは人手不足の問題が顕在化してきた、という事でありまして、そういった意味では、この人手不足を含めた供給面の問題が明らかになった訳ですから、成長力を高め持続的な成長を実現するための議論を幅広くやって行く、という事が非常に重要になってきた、という風に思います。

その意味で政府が、日本再興戦略を加速化あるいは進化させるという方向を打ち出している事は大変好ましい事だし、その着実な取り組みを期待したいと思います。

日本銀行としては、量的質的金融緩和を引き続き強力に進めて、実質金利の低下などを通じて、緩和的な金融緩和を提供する。

あるいは人々の間に定着してしまっていた『デフレマインドからの脱却を図る』という事をしておりまして、こうした事は企業の積極的な投資、あるいは生産性向上に取り組みやすい環境を作っているものではないか、という風に思っております。

従って、ご指摘の点は非常に重要な点でありまして、今後とも広く様々な努力をする事によって、供給制約みないなものを打破して、望ましい経済成長を遂げる必要がある、という風に思っております。

潜在成長率について、足元では潜在成長率が0.2%を割っている状況ではないかと思いますが、先般公開した展望レポートでは0%半ばとしている事に対して、本来はほぼ0%まで低下しているのではないか?
という意見への現在の認識を伺った上で、供給制約がある中で大規模な金融緩和を継続していくことによって、物価上昇と鈍い成長という形で、今後物価上昇と成長のバランスが崩れてしまうという懸念はあるか?
潜在成長率の計算というのは色々な所がやっておりまして、その結果数字も色々違っている訳ですが、確かIMFは0.8%とかいう風に言っておったと思いますけども、私共のエコノミストは0%代半ば、というような感じを持っていた訳であります。

ただこの潜在成長率は、固定したものというより、様々な要因によって変動していきますので、その上政策的な努力によって引き上げる事も出来ますので、あまり固定的に考えてしまう必要なないのではないか、という風に思っております。

ご指摘の点は、確かに2%の物価安定の目標の実現という場合には、わが国の経済が、生産所得・支出のいわば好循環のもとでバランスよく成長して、その中で賃金や物価が次第に上がっていく、という事が望ましい事でして、その為に日本銀行は量的質的金融緩和を推進して、緩和的な金融緩和を提供して、さらにはデフレマインドからの転換を図っている訳であります。

その結果もありまして、このところ労働需給がかなり引き締まり傾向になりまして、賃金の上昇圧力が着実に高まっているという事もありますし、企業収益も改善しているという事で、そういう意味で好循環は作用しているとは思うんですが、やはりこの中長期的な成長力を高めていくという観点からはどうしても3つの事が重要だと思います。

  1. まず第一が、企業における前向きな投資を促す、という事。
  2. 第二は、女性や高齢者の労働参加を高める事や、高度な外国人材を活用するという事を通じて労働の供給力を高めていく、という事。
  3. 三番目には、規制あるいは制度改革を通じて生産性自体を向上させていく

といったこれらの3つの取り組みが非常に重要であろう、という風に思っております。

日本銀行としては先程申し上げたように、量的質的金融緩和を推進して、企業における前向きな投資を促す努力もしておりますし、また、様々な形でリスクテイク(危険を承知で)をしてイノベーション(技術革新)をしていくという事も側面から応援をしている、という事でございます

潜在成長率について、日銀の金融政策としては潜在成長率が高かろうが低かろうが2%の物価安定目標を目指してやるという事に尽きると思いますが、仮に潜在成長率が高くならずに0%に近い状態の中で、物価2%が実現した場合、日本経済と国民の生活にはどのような影響を及ぼすのか?
あるいはこの量的質的金融緩和についてもどのような影響を及ぼすのか?
中央銀行として物価安定目標を立て、それを実現していくという事は最大の使命でありまして、実質成長率がどの位か、という事と直接的になにかリンクして金融政策を緩和したり引き締めたりするという事は基本的には無い訳でして、あくまでも与えられた経済のもとで2%の物価安定目標を実現し、それを安定的に持続させる。という事が中央銀行としての使命だと思っております。

ただ、日銀法にも書かれております通り、日本銀行としてはそういった物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資する、という事を使命として訳ですので、物価が2%を達成されればあとはどうでもいい、という事はもちろん無い訳でして、先程申し上げたように、生産所得・支出の好循環のもとで日本経済がバランスよく成長して、そして雇用・賃金などの増加を伴いながら物価が2%程度の上昇に達する、あるいはそれを安定的に持続する。という事が一番望ましい事な訳であります。

そういった面では、先程から申し上げているような努力をしている訳ですが、一方でやはり、中長期的な成長率を高めていくという観点からは、中央銀行の域を超えた政府とかあるいは民間企業の努力=先程申した3つの点、前向きな設備投資を通じて資本ストックを増やしていく、あるいは女性などの労働参加等を高めて労働の供給を高めていく、そして規制あるいは制度改革を通じて生産性を上昇させていく。こういった事がやはりどうしても必要であろう、という事を申し上げている訳であります。

日本の債券市場について、足元10年債の利回りが0.6%を切る状況で、これは日銀が大量の国債を買っているという初期の効果の表れだと思いますが、一方で債券市場では、国債の流動性が下がって国債の金利が急騰するのではないかというリスクについて、黒田総裁の現在のリスクの有無についての認識と、もしリスクが有るのであれば、日銀が毎月大量の国債を買い続けている状況の中で、急騰のリスクをさけるために日銀としてどういった対策を出来るのか?
前にも申し上げた通り、国際市場の流動性が低下して、国債の取引がスムーズに行われていないとか、価格付けが適切に行われていない、といったような事は無いと思っております。

ただ、大量の国債の買い入れを行っておりますので、常に市場の関係者とは意見の交換をし、一番適切な形で金融緩和が経済全体に波及していくように努めていく事であろうと思います。

金利が低い事自体は色々な要因があると思いますけども、1つの大きな要因はもちろん日本銀行が大量の国債を毎月購入し、保有残高を着々と増やしているという事があると思います。

これは量的質的金融緩和の目的自体がイールドカーブ(利回り曲線)全体に、短期金利だけではなくて長期金利を含めて低位に安定させる事によって、経済の回復ひいては物価安定目標の達成に繋げよう、という事でありまして、これ自体は別におかしい事ではないと思います。

将来にわたって金利がどういう風な経路をたどるか、という事はこれは日本銀行の国債買い入れのみならず、市場関係者のインフレ期待=物価上昇期待がどの様に変わっていくかとか、あるいは海外の長期金利の動向にも影響されるかも知れません。

様々な要因によって影響されますので、今の時点で具体的に将来の姿を申し上げる訳もいきませんし、あまり具体的に申し上ますと金利についてフォワードガイダンス(金融政策の先行きを明示する指針)を出している様にも見られかねませんので、具体的には申し上げませんけれども、今の時点でなにか国債市場が問題をはらんでいるとか、金利が低い事がいかがな事か、といった様な事は全く考えておりません。

日銀による量的質的金融緩和で名目金利の上昇を抑えて、インフレ期待を上げて実質金利下げるという意味では上手くいっていると思いますが、本来長期金利は、先行きの経済や物価を反映して市場参加者の金利感を中心に形成される事によって、市場の鏡として中央銀行が判断すると思うんですけども、量的質的金融緩和は、本来名目金利が上昇する時期を先送りにしている形と同じであるとも考えらます。

また債券市場の参加者は物価が2%にいくという事を信じている人は少なく、今年の夏に日銀が推定しているように1%代前半で推移して、その後上がっていくというような事になるとエコノミストの見方も変わり、債券市場の参加者の見方も変わり2%に行くのではないかと思われると考えられますが、そうなると今まで上がるべき名目金利が上がった時に長期金利が跳ね上がってしまうリスクをどう認識しているか?
また、その時更なる国債の買い増しをするのかしないのか?

金融政策自体、金融資本市場、特に金利・短期金利あるいは長期金利も含めた金利に影響を与えるものでありまして、金融政策を何もやらないで市場で決まって来るだけのものであれば金融政策がない訳ですけども、金融政策は必要に応じて引き締めたり緩和したりすると、という事はそもそも金融政策のレゾンデトル(存在理由あるいは存在意義< フランス語>)というかそのものでありまして、あるべき金利上昇を先送りにしているとか、あるいは手前に前倒しするとか、そういう様な言い方はあまり金融政策という観点から言うと当たってない、という風に思います。

金融政策自体、金融資本市場に影響を与え、特に長・短金利に影響を与える事によって経済に影響を与え、ひいては物価安定目標を達成しよう、という事でありますので、日銀が、あるいは欧米の中央銀行が異常な事をしているという事ではなく、まさに当然の、経済に合わせて必要な金融政策をしていると、という事であると思います。

常にそうゆうスタンスで臨む訳ですから、金利が経済あるいは金融政策が目的としている所と合わない様な所に動く様な事は、それは当然金融政策当局としては放置できないと思いますけども、いずれにしても問題は、金利の動きが経済の実態と望ましい経済の方向に合っているかどうか、という事であろうと思います。

従いまして、何度も申し上げている通り、2%の物価安定の目標を実現し、それを安定的に持続出来る様になるまで、現在の量的質的金融緩和を続ける訳ですし、その間にあっても、上下双方向のリスクを点検して、必要があれば躊躇なく調整する、という事は全く変わっておりません。

株や為替は政策目標にはならないと仰いましたが、よその中央銀行の政策が日本銀行の政策を判断する1つの要素に含まれるのか否か?

国債の買い入れ額目安は、5-10年の長期国債で1回あたり4000億、10円を超えるものに関しては1回あたり1700億、となっておりますが、ここ2~3ヶ月はこれを下回っています。これについて改めて変更などの発表はあるのか?

マネタリーベースに政策目標が変わり、無担保コール翌日物のレートの話がステートメント(声明)から無くなりましたが、日銀による無担保コール翌日物のレートについてはメンション(言及)しなくなったのか?

先程申し上げた様に、為替レートを目標にして金融政策を運営するという事はありません。

他の中央銀行が何をするかという事は、為替レートだけではなく現在の様に非常にグローバル化した金融資本市場のもとでは、様々な金融資産の価値に影響を与えますので、当然関心を持って見守っておりますけれども、何か他の中銀がやることに合わせてこちらがどうこうするという事はありません。

買い入れの方針は金融政策決定会合で決めまして、ご指摘の内容はあくまでも事務方の運営の指針という事であります。ですから、ご案内のような事で常に市場の関係者とは当然意見を交換をしながら、一番適切な形で金融政策が効果を発揮できる様に運営しておりますけれども、政策委員会で決める買い入れ方針というのは全く変化しておりません。

マネタリーベースうんぬんは、昨年の4月4日に量的質的金融緩和を導入する際に、従来の無担保コール翌日物の金利というものをターゲットにするのではなくて、マネタリーベースをターゲットにするという形に変えた訳でありますから、特別に無担保コール翌日物の金利をターゲットにしている事はありません。

なるべく黒田総裁の言葉通りを文章に起こしたつもりです。
ずっと動画とにらめっこしてました。
ほぼ半日かけて文章に起こしたのでぜひ見ていただきたい…。笑

後日、日銀のHPを見てたら『総裁定例記者会見要旨』として全文PDFで見れた…。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405c.pdf

そりゃそうだよね…公表しないはずないよね…。
なんか悔しいからこの記事は残しておくけど、ダメそうなら削除します。

おしまい。


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