日銀は10月31日の金融政策決定会合で追加緩和を決定し株価が大きく上昇したので、久しぶりに記者会見の内容を文字に起こしてみようと思います。ちなみに下の画像が日経平均の推移です。追加緩和の発表を受けてバーンと上昇してます。

あと日銀からの公表分はこちらです。
→ 量的質的金融緩和の拡大PDF
→ 展望レポート 11月1日公表
黒田総裁の発言内容
「日本銀行は本日、2%の物価安定の早期実現を確かなものにするために、量的質的金融緩和を拡大することを決めました。」
追加緩和の内容
- マネタリーベースの年間増加ペースを60~70兆円から80兆円に拡大
- 長期国債の保有残高の年間増加額を50兆円から80兆円に30兆円拡大
- 長期国債買入れの平均残存期間を7年程度から最大10年に3年拡大
- ETF、J-REITの買入れペースを3倍
- ETFは年間約3兆円、J-REITは年間900億円
日本銀行は昨年4月、15年に渡るデフレから脱却ため量的質的金融緩和を導入しました。量的質的金融緩和は、日本銀行が2%の物価安定の目標の実現に強く明確にコミットすると共に、こうしたコミットメントを裏打ちする量的にも質的にも従来とは次元の異なる金融緩和することを柱としています。
このような政策によって人々の間に定着してしまったデフレマインド抜本的に転換することが目的です。量的質的金融緩和の導入以降、1年半が経過しましたが、これまでのところ所期の効果を発揮しています。
すなわち我が国の景気は消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けています。物価面では、量的質的金融緩和を導入する直前の昨年5月の時点で-0.5%であった消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースで見て+1%台前半まで改善しました。
もっとも、消費税率引き上げ後の反動減は自動車など耐久消費材を中心にやや長引いています。また、このところ原油価格が大幅に下落しています。こうした需要面の弱めの動きや、原油価格の下落は物価の下押し要因として作用ています。
消費者物価の前年比は9月には+1.0%まで伸び率を縮小しました。もとより、消費税率引き上げに伴う需要面の弱さはすでに和らぎ始めていますし、原油価格の下落はやや長い目で見れば日本経済に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用すると考えられます。
ただ、短期的とはいえ現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクも考えられます。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、ここで量的質的金融緩和を拡大することが適当と判断しました。
量的質的金融緩和は人々のデフレマインドを払拭し、予想物価上昇率を引き上げることを狙った政策です。
予想物価上昇率がどのようなメカニズムで形成されるかは様々な議論がありますが、長年にわたってデフレが続いた我が国では、米国のように予想物価上昇率がすでに2%程度にアンカーされている国とは異なり、実際の物価上昇率の変化が予想物価上昇率の上昇に大きな影響を与えてると考えられます。
実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、それがどのような理由によるものであれ、予想物価上昇率の好転のモメンタムが弱まる可能性があります。そうなれば、せっかくここまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅れてしまうリスクがあります。
その意味では、我が国経済はデフレ脱却に向けたプロセスにおいて、今まさに正念場、クリティカルモメントにあると言えます。
今回、追加緩和を決定したのはこうした考え方に基づくものです。今回の措置は、デフレ脱却に向けた日本銀行の揺るぎない決意を改めて表明するものです。デフレのもとでは、価格の下落、売上や収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続きました。
量的質的金融緩和によって、デフレマインドの転換が実現すれば、価格の緩やかな上昇を起点として、売上や収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇という形で経済の好循環が実現することになります。
この春の労使間の賃金交渉で、物価上昇率の高まりが意識され、多くの企業でベースアップが実施されました。企業の価格設定行動も変化の途上です。
今、この歩みを止めてはなりません。物価安定の目標が、人々の気持ちの中にしっかりと根付き、「これからは2%の物価上昇を前提として行動しよう!」と思うためには、日本銀行がその早期実現に強くコミットし、これを実現していくことが何よりも大切です。
昨年4月に申し上げた通り、日本銀行は2%の物価安定の目標の早期実現のためには出来る事は何でもやる、方針です。今後も日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的質的金融緩和を継続します。
何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、物価安定の実現に必要になれば躊躇なく調整を行うという方針にも変わりはありません。
という事と、先程クリティカルモメントだと申しましたが、総裁がそういった事を胸に抱いたタイミングはいつ頃だったのかをお願いします。
その理由として、先程申し上げた通りでありまして、またこの点は量的質的金融緩和拡大についての決定に沿った声明・文書が回っていると思いますけれども、そこでも触れてある通り、物価面ではこのところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱目の動きや、原油価格の大幅な下落が下押し要因として働いていると。
この内、需要の一時的な弱さはすでに和らぎ始めているほか、原油価格の下落はやや長い目で見れば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用すると。しかし短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあると。
こういった事から日本銀行としてはここに書いてあります通り、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここでこのような量的質的金融緩和を思い切って拡大するべきであるという結論に至ったわけであります。
私自身、色々な指標を見て感じる所もございましたし、政策委員の方々も色々なお考えだったと思いますが、より具体的にはそういった政策委員の経済見通しが出され議論する中で、やはりこういった量的質的金融緩和の拡大が必要であると。いう意見が出され、今申し上げたような決定に至ったということであります。
躊躇なくやるという事でかなり限界もきているのかなというのがあると思うのですが、その辺追加の余地はまだあるのでしょうか?
基本的に、このようなリスクがあると、あるいはあり得ると、いう認識は広く共有されていたのではないかと思いますけれども、それに対して今、このような事(追加緩和)を行うのが適切かどうか、必要かどうかと、いう点で意見が別れたのではないかと思っております。
いずれにせよ、量的質的金融緩和のこうした拡大によって、最初に申し上げた通り、デフレマインドの転換が遅延してしまうというリスクを未然に防ぐ事が出来るのではないかと、いうふうに思っております。
なお、これ自体、相当思い切った拡大だと思いますのでそれなりの効果があると思っております。そして、今のところ特に何かさらにしなければならないと思っておりませんが、この文書にもあるように、また先程冒頭に申し上げた通り、2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点までこれ(量的質的金融緩和)を続けるわけですが、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し必要な調整を行う。
先程申し上げたように、必要があれば躊躇なく調整するって事でありまして、そうした政策の余地は依然としてあると思っております。ただ、今の時点で(今回の追加緩和)、これで十分こういったリスク(デフレマインド転換の遅延)に対応できると、いうふうに思っております。
日銀はこれまでも大規模な金融緩和を続けてきて、所期の効果を発揮されていると仰っておりましたが、10兆~20兆を今回増やすことによって、人々のインフレ期待というのが急激に変わるのか?効果についてもう少し詳しく教えて下さい。
そうした事が続くと物価上昇期待自身も下がってきてしまうと。そうなると、将来の、例えば賃金の設定とか、価格の設定についても下がってくる恐れがある。
そういう事になりますと、せっかく実現しつつあるデフレマインドからの転換というものが大幅に遅れてしまうと、いう懸念があるわけでして、そういったリスクを未然に防ぐと、いう点からまさにこの必要にして十分なだけの拡大をしたという事であります。
これによってどういった効果が期待されるかという事ですが、それぞれ委員の方はそれぞれのお考えで経済見通しをこれ(今回の追加緩和)をベースに経済見通しを出されて、それが今回の展望レポートの後ろに添付されておりますけれども、これを見て頂いて分かりますように、物価面を中心にそれなりの効果が出てるという事ではないかと思います。
という事と、今回の追加緩和を織り込んでも、今回の展望レポートの政策委員の物価見通しを見ると、下振れているわけですが、これは政策委員の中で緩和効果について疑問を持っている人が居るという事なのか?
そういった追加緩和をしても物価見通しが下振れている理由について総裁のお考えをお聞かせ下さい。
もちろんその2年程度というのも元々ある程度幅を持たせた表現でありして、その上で昨年4月に量的質的金融緩和を導入した直後の展望レポートでは、2014年度・15年度の見通し期間の後半にかけて2%程度に達する可能性が高いとしてたわけですが、その後本年4月の展望レポートでは見通し期間が2016年まで伸びましたので、2014年から2016年までの見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高いとしていたわけですが、今回の展望レポートも全く同様に、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと見ておりまして、そういった見通しに変化はございません。いずれにせよ、2年程度を念頭に置いて出来るだけ早期に2%の物価安定の目標を実現するという考えには変わりありません。
それと、すでに円安も進んで地方を中心として円安によるコストプッシュインフレみたいなもの非常に気にされている声も地方を中心にたくさんあって、かえってそれが消費の減反を招くんじゃないかというリスクもずっと懸念をされてきていたわけです。
あえてここで追加緩和という事で、そういったリスクをさらに高めるという事も言えると思うんですけれども、そこについてはどういったご見解でしょうか?
基本的に、非常に明確な形で強く2%の物価安定目標にコミットし、それを裏打ちするために大規模な量的質的金融緩和を行うと。そうした下で、イールドカーブ全体・名目金利全体を押し下げる事を行い、さらにはこういうリスク資産(ETF、J-REIT)も買い入れてリスクプレミアム(リスクに対して支払われる対価)を圧縮すると。
一方で、物価上昇期待を引き上げて実質的な金利あるいは実質的なリスクプレミアムを圧縮することによって投資とか消費を刺激し、経済全体を成長させることによって、いわいるGDPギャップ(供給力と現実の需要の乖離=需給ギャップ)というかそいうものを縮小し、賃金・物価の上昇圧力を作っていくし、またそれを物価上昇期待でさらに押し上げていくと、こういう基本的なメカニズムは変わっておりませんし、それはこれまで予期していた効果は発揮してきたというふうに思います。
ただ先程申し上げたように、このところ消費税の駆け込みの反動減の影響が自動車等やや長引いていると。そうした下で、ごく最近ですけれども石油価格が大幅に下落し、そういった事から現に消費者物価の上昇率も少しづつ縮小してきていると、といった事が起きて、それが今後さらに続くとすれば、これはやはり物価上昇期待に対する影響も懸念されますし、そもそもさっき言ったような好循環にマイナスの影響を与えるリスクがあると、という事でそういったリスクに未然に対処するためにこういった内容の量的質的金融緩和の拡大を決定したということであります。
なおこの緩和措置というのはあくまでも今申し上げたような事を通じて物価安定目標の早期達成をより確実にするために行うわけでありまして、為替相場等に対する影響を目的としたものではありません。
いつも見てるテレビ東京WBSの豊島キャスターの質問⇩
今後の追加のオプションというのもまた幅広くあるのか?
今後行動する時は現在追加緩和された様なモデルがベースとなって行動されるという理解で良いのか?あと、総裁はかねがね物価も経済の見通しも強気でここまで仰っておられましたけれども、あえてここで踏み込んだという事は予防的な措置だという理解でよろしいでしょうか?
日本銀行としてはこうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここでこういった量的質的金融緩和の拡大が適当であるという決定に至ったということであります。
それから、私共としてはこれで十分こうしたリスクに対応できると思っておりますけれども、まぁ経済は経済ですから色々な上下双方向のリスクはあり得るわけですから、そうした事があればそれは適切に調整して対応していくということに尽きますけれども、今の時点でどういうオプションがあるとかそういう事は申し上げる段階にないと思いますし、そういう必要もないと思いますが、オプションは色々あり得るというふうに思っております。
ただ、様々な要因があって、まぁ原油価格の大幅下落というのも1つですけれども、消費税の反動減がやや長引いているとか、あるいは世界経済の見通しが、最近のIMFの見通しでもさらに若干ですけれども引き下げられたとか、様々な要因がある中でこういったリスク(デフレマインド転換の遅延)が出てきてるので、このリスクが実際に顕現化してしまうと先程申し上げたように、せっかくこのデフレマインドを転換させてきてる、要は途中ですので、そこでまたデフレマインドの方に戻ってしまってはこれまでの成果が減ってしまいますので、そういう事にならないようにこういう対応をしたと。
様々な要因からそういうリスクが出てきたのでそれに対応したという事で、戦力の逐次投入ではありませんし、また逆に言えば、何かこれでは不十分でこういったリスクに対応できないというふうには全く思っておりません。これだけの事をやればこういったリスクに十分対応できるというふう思っております。
豊島キャスターの質問終わり。
11月の17日にはGDPの発表がありまして、その間政府では消費税の追加引き上げを巡る有識者会合が開かれ総裁もご出席だと思います。安倍総理は12月に消費税の引き上げという事を言っておられます。
その前のタイミングであえて追加緩和をされたという事は、総裁がかねがね仰っておられる財政の再建、消費税の追加引き上げの重要性という事を主張しておられながら、このタイミングで緩和してしまうとある意味では食い逃げされてしまうと。
つまり消費税の引き上げの担保保証というのが取れない中での追加緩和ということがあり得るのかどうか?
もう1点、政府の公的年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立法人)が今資産運用の変更の過程にあると思います。報道によりますと、政府がGPIFに対して議論しているのは、債券の保有比率を減らす一方で、内外の株式の比率を増やすということだと思います。
という事は、GPIFが債券のポートフォリオを減らす分、日本銀行が債券の保有を増やせば、まさに国民経済的に見ればポートフォリオリバランスになるのかどうかというその辺の認識もぜひお伺いしたいと思います。下品な質問で恐縮でございます。
ただ、消費税の再引き上げの点につきましては、政府で経済動向を見極めて決定するという事になっておりますので、それはまさに政府で決定される事であり、私共の関与する所では全くありません。
従いまして、そういった事に影響を与えようとかどうこうしようという様なつもりもありませんし、そういう事にもなりません。あくまでも私共の金融政策は経済情勢を見極め、適切な金融政策を運営していくということに尽きると思います。
なお、中央銀行として財政の持続可能性が担保されるという事は当然重要だという事はどの中央銀行も述べていることでありまして、政府が中期財政計画を徹底してそれを着実に実行していかれるということは期待しておりますけれども、消費税うんぬんについて私共が何か影響を与えようとか関与するということは全くありません。従って、そういた事を考慮して金融政策を決めるといったこともありません。
GPIFの問題につきましてはこれもまさにGPIFと政府で今議論されていることだと思いますので、どうこう申し上げる点はございません。
ご承知のように、金融資本市場は色々な動きますので、そういった様々な内外の要因も踏まえつつ金融政策を運営することはプラティカル(実用的・実践的)な観点から当然でありますけれども、GPIFの投資政策がどう変わるとか、あるいは動くというような事と私共の金融政策とは直接的な関係は全くございません。
今般、平均残存期間を長期化・柔軟化したのはイールドカーブ全体にわたって金利低下を促すという量的質的金融緩和の基本的な考え方に沿ったものであります。まぁ短国市場で最近しばしばマイナス金利での取り引きが見られているのは事実でありますけれども、それは結果としてそういう事が起こっているわけで、日本銀行がそれだけ強力な金融緩和を進めているという事の現れであって、特に問題があるとは思っておりません。
何回も繰り返しますけれども、こういった長期国債のかなり大幅な購入額の増額といった事と、さっき言いましたイールドカーブ全体にわたって引き下げを促すという観点から最大限で3年程度の平均残存期間の延長を図ってるということは、もちろんこれは最大限という事ですので7年~9年の間でまさに最も適切な形でイールドカーブ全体に金利低下を促す事が出来るように最適のオペレーションを行うということであります。
もちろん経済全体としてプラスになっていけばそういう所にも好影響は及ぶとは思いますけれども、ライムラグがあるでしょうし、そういった色んな面があるという事は前から申し上げている通りであります。
ただ、今の足元の状況を見ますと、実は原油だけではなくて色々な鉱物資源とか食料品なんかの価格もだいぶ下がっているわけですね。ですから、輸入品の価格がこれまで起こった円安と、それからその商品市況の下落とで、かなりの程度相殺しているというか、原油などを見るとそっちの下落の方が大っきいわけですね。
ですから色々な局面とか業種業態によって様々な影響を与えるとは思うんですけれども、基本的には先程申し上げたように、ファンダメンタルズに沿った形で為替レートが動くこと自体は大きなマイナス作用になるということはないと思います。
それから足元の話はさっき言ったように、実は円安で輸入品の価格が上がる要素よりも相当大きく国際商品市況が下落してますので、例えばガソリン価格もずーと毎週のように下がっているわけですね。
ですからそこはちょっとまた違った局面かも知れません。いずれにせよ私共としてもマクロ的な影響、あるいは製造業・非製造業、あるいは企業の規模といったそういったところの様々な動き、これは為替だけでなく色々な要素の影響があるわけですけれども、そういうところは常に丹念に点検して参るつもりでございます。
つまりこれは、物価はどうにか上がったけども、成長率は上がらない。という事を端的に示していると思います。今日の展望レポートでもこっそりとまでは言いませんが潜在成長率の評価を引き下げられております。
つまり日本経済は一段と成長しないという姿になっています。先程この量的質的金融緩和は予期してた効果を発揮してきたと仰られました。
ただ結果としては、物価はちょっと上がったけれど成長率は一向に上がらないと、むしろ下がっているという姿になってます。日銀法では、物価の安定を通じて健全な経済発展に資することを理念とする。と書いてます。
この理念にすら反してるんじゃないかと思うんですが、このOOE(量的質的金融緩和)は本当に効果があったのか?これからあるのか?大いに疑問があるんですがいかがでしょうか?
私共は昨年の4月4日に量的質的金融緩和を導入して以来、経済の実態を常に慎重冷静に点検し、その都度金融政策で必要かつ十分なものかというのを毎回の政策決定会合で議論をして参りました。そうした中で消費税の先程申し上げたような駆け込みの反動減が耐久消費材をやや長引いてるとか、世界経済の見通しが全体としてやや下振れているとか、そうした下で原油価格がかなり大幅に下がったと。
こういった現状を踏まえて2%の物価の安定の目標を出来るだけ早期に達成するというためにこういったリスク(デフレマインド転換の遅延)を未然に防ぐという観点から量的質的金融緩和を拡大したと、いうことであります。
実質成長率は色々な要因で様々に振れております。そうした中で中長期的に見た潜在成長率は常に申し上げている通り、基本的には金融政策でどうこうするというよりも、構造政策・成長戦略といったものだと思います。
ただその中でもデフレ下ではどうしてもイノベーションが行われない、リスクテークが行われない、十分な投資が行われないという事になりがちであります。そこで物価安定目標の2%というものを安定的に持続できるという形になれば企業や家計がそういった緩やかな物価上昇を前提にして、賃金とか価格、あるいは投資その他を決めるということで、より望ましい経済成長になるということでありまして、この点は私共が考えていた事と現在と全く変わっておりません。
政策委員会の議論の中で出口についてシュミレーションされて、その出口のリスクより今回緩和の拡大を決められたメリットが上回ったというふうに綿密に判断された結果、政策委員会として決められたのでしょうか?
もう1点、原油価格の下落のような日銀の政策ではどうにもならないような要因でしばらく物価の伸びが弱まるというような状況ならば、その点を国民に説明すれば良いのではないか?というような気がしていまして、そういうような状況の中で、何が何でも2%を達成しなければいけないのか?と疑問に思っておりまして、そこについてご見解をお聞かせ下さい。
出口の問題につきましては前から申し上げてる通り、今具体的な形で出口戦略をはやはり時期尚早だと思います。出口に向けた対応とかその後の金融政策の運営のあり方というのはその時々の経済とか、金融・物価情勢その他によって変わりうるものですので、早い段階から具体的なイメージを持ってお話する事は適当ではないと、そういう事をするとかえって市場との対話という観点から混乱を招く恐れが高いと考えております。
日本銀行としては将来にわたって2%の物価安定の目標を達成・維持するために機動的な金融政策を運営することは十分可能であり、そうした意味で出口が困難になるとは考えておりません。
それから原油価格、あるいは消費がややこのところ弱目だったとか、世界経済の見通しが若干下振れしているとか、そういった様々な要因の中で、原油価格の下落にしても先程申し上げたように日本は石油の100%をほとんど輸入してわけですので、原油価格が下がるという事は日本経済にとって基本的にプラスですし、そういった事があればある程度期間を長めにとって見れば、物価にもプラスに効いてくるとは思います。
ただ、先程来申し上げれる通り、米国と違いまして日本は長いことデフレが続いてデフレマインドが染み付いているわけで、それを脱却しようとしてやってきている途中であります。物価上昇率も1%台前半というか足元では1%という所ですし、物価上昇期待も全体としてかつてよりも上がってはいるんですけれども、このところやや停滞していると。さらにどんどん物価上昇期待が上がっていく事になっていないと。
そういう所で足元の物価上昇率が下がるというような事態に対して単に、将来いずれ2%になりますと言ってるだけでは、やはりこのデフレマインドの転換というものには良い影響を与えないという懸念があるということであります。従いまして、あくまでもそういったリスクを未然に防ぐためここで量的質的金融緩和を拡大するということでありまして、それによってこうした事(今回の追加緩和策)も通じてこの政策委員での大勢の見通しにあるように、2015年度を中心とする期間に2%の物価安定目標に達成する可能性が高いという見通しが得られているわけであります。
今日のマーケットの動きなどを見ると明らかにサプライズという事が取れるわけですが、総裁はマーケットのコミュニケーションという点で問題があるというふうには考えていらっしゃいませんでしょうか?
あと今回の追加策は3という字が目立つんですけれども、前回は2でしたけれども、ただその2年程度でという期間に対しては2年なのか3年なのか依然としてちょっと曖昧なのですが、黒田総裁自身はどちらなのでしょうか?
ただ、その内容とかその他に関してはいずれ議事要旨で述べられることになると思います。3というのは、別に意図したものではなく、プレゼンテーションのためにこういうパネルを作ったということであります。
期間につきましては先程来申し上げてる通り、2年程度の期間を念頭に置いて出来るだけ早期にその2%の物価安定目標を実現するというために、昨年4月に量的質的金融緩和を導入し、その直後の展望レポートにおいてもすでに2014年から15年にかけての後半というか、今風に言えば2015年度を中心とする期間というか、そういった所で2%に達する可能性が高いと言っていたわけでして、そこは見通し期間を3年に延ばして2014年か16年になった所で2014年度から16年度の見通し期間の中盤頃に2%に達する可能性が高いという事をずーと言ってきたわけですが、今回もそれは維持しております。
いずれにせよ、2年程度の期間を念頭に置いて出来るだけ早期に物価安定目標を達成するという事に、そういう目標、目的に変わりはありません。
従いまして、引き続き2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いというふうに思います。つまり2015年度の消費者物価の見通しが幾分下振れたのは、1.9という中央値から1.7に落ちたわけですけれども、それは主として原油をはじめとする国際商品市況の下落によるものでありまして、そういったものはさっき申し上げたように、年度後半に剥落しますので、十分この1.7%という見通しの中央値の下でも2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと。
そういうふうに考えられるからこそこの展望レポートにそういうふうに書いてあるわけであります。
その際も上下双方向のリスクは点検し必要があれば調整しますと言ってきたわけですけれども、ここにきて、これまでの所期の効果は上げてるとはいえ、こういったリスクがあるという事が議論の中で明らかになったわけですので、それに対応して必要にして十分な措置をこのタイミングで採ったという事であります。
最後に
今回の記者会見は面白かったです。白川前総裁の見通しよりも現状が下回っている事に関して質問があった時の黒田総裁の回答が笑えました。きっぱりと「そりゃ見通しが甘かっただよ♪」てな感じで答えてます。
今回は追加緩和ということだけあっていつもより少し長い記者会見でした。何時間も動画の再生停止を繰り返して、聞き直しては文字に起こしているので、最後の方は「まだ終わんないのかよ…。」と気持ちが途切れ途切れ。
やっと終わるー♪と思った時のテレ朝山口氏の2段攻撃…。最後の質問です。他の人より声がいいから多分アナウンサーかなんかでしょうね。
ただ、為替レートは目標にしてないって以前から何回も同じような質問を受けては何度も何度も発言しているので、聞いてるこっちは「いい加減にしてくれよ…。無駄に時間を引き伸ばすなよ…。」って心の中で愚痴ってました。ごめんね山口。
おしまい。